Abnehmender Mond. -下弦の月







 人間が住む世界とは別の世界、魔界。
ここに置いての魔界とは、魔力を持つ、「人」以外の生物が住む世界。
意外な事に、人間の住む世界との行き来は簡単だが、
基本は限られた者でしか行き来を赦されてはいない。
理由は至ってシンプル。混乱を招くからだ。

又は、人が、外国へ訪れるのに、パスポートを要する、そんな感覚に近い。

 時に人は夢等で魔界へ迷い込んでしまう事もあるし、
その逆もまたそうだ。

人の世界に警備・警察が存在するように、
その逆もまた、…そうだ。

"Hunter"

自らをそう、名乗るは吸血鬼。
その知性に置いて、その役目を担い、闇の眷属として。

人と、魔族の秩序の乱さぬように、
幾年も変わらぬ月の光は、"それ"を見続けた。

月の光こそは変わらずとも、時にその姿を変えるように、
年月は進化と共にあり続ける。

長命である魔族とは違い、輪廻を繰り返していく人々は、
いつしか遠い約束を忘れる。
故に魔族側もかつて交わした掟を…人間側にその意思が見られない事により、
"忘れる"。(正確には掟を破る)



 秩序の混乱を避ける為に、夜に身を隠し、今日も吸血鬼は月夜を背負う。





―――…これは、ドイツのヴァンパイアのお話。



 人間と、吸血鬼の間に生まれたディヴァインは、混血のダンピール(若しくはダムピール)。
ダンピールは、吸血鬼にとって、もっとも厄介な人物である。
何故ならば、吸血鬼退治に一番適しているのが、ダンピールだからだ。
また、仮に命を失っても、吸血鬼となる。

一見は、吸血鬼の能力受け継いだ人間である事が多いが、
ディヴァインは双子として生まれた。
人間的要素を、双子の弟が引き継いでしまった為、
ディヴァインは弟の分の吸血鬼要素を引き継いだ。

通常なら、人間の世界で生き、魔族を狩る側として生きるであろう彼は、
魔界で生きているのは、彼の父親が魔界の帝王だからである。

と、いうのを、ディヴァインは信じていたが、それは表向きの理由に過ぎなかった。

 帝王は容赦のない人物で、ディヴァインは聊か不満があった。
ある日、禁句であった「母親」の事、「兄弟」の事、さらに「不満」を父親にぶつけた。

「母親」の話題を出された父、帝王ゼルギウスは怒り、
ディヴァインの、既に一流のハンターとして備わっていたディヴァインの能力を封じ、
人間の世界へ、堕とした。

 ハンターであるディヴァインは、人間の世界で任務をこなしていた為、
人間界での過し方を知らない訳ではないが、
ほとんどの能力を失い弱り、その為飛ぶ事も出来ず、朦朧とする意識の中で、
気を失いかけた。

その時。




「Estrie?(吸血種のような魔族)」

頭上から声がした。が、その後直ぐに、

「いいや、違う、君は…。」

と言い直す。その声の持ち主の胸元で何かが光る。

月の明かりを浴びて光る、"それ"は、あまりにも眩しく…。


「吸血鬼("Vampir")…」


十字架を握り締めた、神父、ユウリはかすれた声で呟いた。


まさか、この神父の下でお世話になる挙句、
自分の母親と父親とも哀しい過去があり、

それ故に…自分の所為で、彼が…、ユウリ神父が命を落とす事になる等と…
この時はまだ、知る由もなかった。
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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