ロゴ The bird which cannot fly  

- lune solitaire -

 

(*レリックが10代だった頃の、兄弟。)

 

コンコン


 軽く扉を叩く音が、耳障りだと、茶の髪をさらりと揺らし、青年は思った。
机の上で読んでいた本を無道さに閉じ、棚の置くへとしまう。
 部屋の主の返事が無い侭だが、
その扉はガチャリと音を立てて開かれた。
だが青年は扉の向こうを確認しようとはしない。

「レリック」

 声は低く響いた。そこでようやく、レリックは後ろを振り返る。
自分より少し濃い色をした髪を持ち、炎が燃える様な赤い瞳。
口の端を曲げ、唯静かな空気を一瞬に冷たいものに変えた、兄。

「何?」

 兄よりも色素の薄い、赤みの掛かったブラウンの瞳で、
自分の背後に立つ男を訝しげに見上げた。
 兄は静かに歩み寄り、綺麗に整った侭のベッドに腰をかけた。
ギシリ、と、彼の重みで響いた音は、
まるでレリックの心情を察したかのようだった。
 その動作を、レリックは目で追うだけで、特に何かを言う事もなかった。
だが。

「昨日の女」

「は?」

 兄の薄く開かれた口から出てきた、突然の言葉に、
レリックは幾分、不機嫌に近い声を上げる。
 赤い瞳の、目の前の男がくっと音を鳴らして、笑う。

「昨日の女、お前にやろうか?」

「…っ…!」

 何を、と喉の先まで出掛かった言葉を、
レリックは息事、ごくりと飲み込んだ。口をつむぐ。
 一瞬、自分の目が見開かれるのが解ったが、無理も無い。
その、昨日の女、とは兄貴が家に連れて来た女だ。
恋人ではなさそうだが、相手は如何思っているか等、レリックは察する。
自分は恋人等ではない事を、理解しているだろう彼女を。
 そんな事を言いに来たのか、と言葉が頭の中でリフレインするだけで、
声にならず、消える。
相手は依然とした態度の侭、レリックの返答を待つだけだ。

「…いらねぇよ。何故そんな事を言う?」

 少しの間があった。が、
至って冷静なトーンでレリックは否定した。そして疑問。
どこまでも余裕な態度を見せる兄に、レリックは胸の圧迫を感じた。
小さい頃にあまり遊んだ記憶も無く、家にいない事も多かった、兄に。


「お前が、寂しそうだったから」

「なん…っ!」

 兄は笑った侭だ。微笑みではなく、嘲笑うにきっと近い。
鋭い視線と、揶揄った口元が、レリックを、その心内を一層追い詰める。
寂しい?俺が?何を見てそう思うと言うんだ?
そんな事等、兄が解る訳ないだろうに。

それは勝手に決められた彼の推測に過ぎないのだから。







そう、縦しんばそれが、真実か、否かは別として――――。


It continues...?
2006/09/17


 

 

 

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